2015年の中国での記事です。
北京人民大会堂での全国政協会議上での楊金生氏の報告です。
2007年は全世界で用いられる鍼灸の鍼の本数は30億本に満たず、そのほとんどが中国製であった。現在はディスポーザブルが台頭してからというもの、臨床での使用量が急速に増加して、2013年には非公式ではあるが約50億本以上に達し、年10~20%の勢いで加速、50億本中その半分が韓国企業の生産とのこと。天津の会社では年15億本を生産しており、その他の韓国企業は蘇州・青島に工場を持ち、その生産量は約10億本であり、この2社で中国国内と国外の市場の約50%を独占している。そこに日本・ベトナム・ドイツ等の国内で製造された鍼灸鍼を加えると、中国ブランドの鍼灸鍼は既に全世界の1/3にも満たず、本場の鍼製造国の権威は失墜しているといえる。
日本や韓国企業の生産は既に無人化・自動化しているが、中国企業では(華佗・佳健)半機半人状態で、その他の企業も未だに人海戦術であり、多くの工場が閉鎖を始めている。
中国メーカーの鍼は世界においてもそのブランド力を失いつつある。日本のセイリン製の鍼は中国製に代わり世界の高級ブランドとして、韓国の東邦・杏林製の鍼は中層ブランドとして認知され、中国メーカーの鍼はいずれも最下層の地位にある。更に中国メーカー同士でも生存競争の為に無秩序な価格競争と相互批判を繰り返し、市場を保持するため華佗のようなブランドでさえ価格競争に参入し、その結果自己のブランドの影響力を下げている始末である。統計によると、国内の鍼灸鍼製造企業の数は50社に満たず、職人の引き抜き・原料削減を惜しまず市場のために質を犠牲にしている企業もあり、その負のスパイラルによって中国ブランドの不信を招いている。
更に視察によって感じるのは中国企業には対価に見合う経費と販売を支えるパイプがないことである。
そこで以下の3項目を提議する。
❶基金を設立し、民族企業を鼓舞して技術改革を促進する
国家戦略として、専門基金を設立して企業を鼓舞することで、無人化・自動化を加速させ、質と量を向上させる。技術革新と製品開発・研究を強めることが市場競争の主導権を握ることになる。
❷伝統製造業の税収優遇と市場促進政策を保護する
伝統業は利益率が低いため税収優遇措置により企業の負担を軽減する。国家として臨床では国産医療器械を優先的に購入・使用することを勧め、鍼も国内メーカー産を推奨し、三甲中医院では優先的に国家中医薬管理局指定の製品を一定量使用すべきとする。
❸政府による市場の介入と管理とメーカーによる自立と宣伝を強める
政府の介入により規律違反や低品質の鍼メーカーの淘汰と引き締めを強める。中国鍼灸学会が組織を造り、企業行為を監視して無秩序な競争に歯止めをかけ、透明性と生産性を明確にする。日本のセイリンと質を、韓国の量を競争することで、国内企業の相互団結を図る。学会組織から鍼灸鍼十大製造企業及び十大ブランドとして選抜して宣伝することも世界への影響力を誇示することとなる。
中国中医科学院常務副院長の劉保延氏は「医療の進歩によって医療機関の鍼灸への需要は増加しているが、国内メーカーは「小而散」の状況である。生産水準・競争力の低下により、小企業同士の価格競争も深刻となり、メーカー数が多いが規模が小さいことによって大事を成すことは不可能である。政府主導による企業合併により競争力を持つことができる」と述べている。